認知症と遺産分割協議

人生100年時代です。

長生きをされる方が多くなり、親の相続がおこる頃には、その配偶者や子どもも高齢となることが多く、中には病気で入院をされていたり、認知症を発症したりされることもあります。

父親が亡くなったので、相続の手続きをしたいのですが、母親が認知症で施設に入っていてもできるのでしょうか。

司法書士 野田啓紀

認知症の程度にもよりますし、できる場合とできない場合があります。

施設に入っているからと言う理由ではなく、お母様に判断能力が十分にあるかどうかがポイントです。

相続の手続をするには、相続人全員で遺産分割協議をして、遺産の分け方や取り分について、話し合いをします。

これをするには、意思能力、判断能力が求められます

話し合いに参加して、内容をご理解ご納得していただけているかが重要です。

慎重に進めるならば、主治医の先生に診断書を作成してもらい、これを参考にすることもあります。

書類に自筆できなくてもかまいません。

また、施設に入っていても、寝たきりで手が動かせなくても、頭が元気で意思表示がしっかりできれば、可能です。

では、相続人の中に、意思能力が不十分で、話し合いが難しい方がいるときは、どのようにすればいいのでしょうか。

成年後見制度を利用する

認知症や脳疾患などで、意思能力が不十分な方に代わって、成年後見人が代理人となって話し合いに参加します。

そのため、家庭裁判所で成年後見人を選任してもらうところからはじめます。

裁判所で手続をするのはめんどうだからと、相続の手続を放置してはいけません。

また、本人の了解がもらえないのに、家族が勝手にサインをしたり押印することは、犯罪ですから絶対にやめましょう。

遺言を作成しておく

遺言があれば、相続人で遺産分割協議をしなくても、相続の手続を進めることができます。

今回の事例のように、配偶者や子どもが認知症等によって意思能力に不安があるときは、遺言を作成しておいてください。

遺言をつくることを遠慮される方や、めんどうに思われる方も多いですが、遺言ほど、相続のあらゆる問題を簡単にする方法は、他にはありません。

遺言は、認知症対策には絶大な効果があります。

しばらく様子をみる

上のふたつの方法のいずれもできない場合には、意思能力が不十分な配偶者が、ご臨終を迎えるまでしばらく遺産分割をしないで待つこともあります。

相続の手続を急がず、しばらく待てる状況でなければできませんが、両親ともにお亡くなりになってから、子どもたちだけで相続の手続をすることで、意思能力の問題については自動的に解決することとなります。

しかし、相続の手続が義務化され、特に、不動産の名義変更はお亡くなりになってから3年以内に済ませなければならなくなります。

また、遺産分割協議は、亡くなってから10年以内に制限されることなどから、長期間にわたって放置することはできません。

これらによっても、遺言をつくっておくことは必須と考えます。

相続が開始してから起こる問題点にその都度取り組むよりも、時間と費用を相当削減することができます。家族の負担がとても軽くなります。

相続にかかる手間は、財産の多い少ないにかかわらず、変わりません。

それゆえ、財産が少ないほうが、相続にかかるコストが相対的に大きくなるものであり、遺言を作成しておく意味も大きくなってまいります。

自分が亡くなったとき、連れ合いの方が認知症になっていれば、遺産が塩漬けになり、家族全員が困ります。

これからの終活は、遺言や成年後見制度をよく理解し、生前からしっかりと準備しておくことが求められます。

投稿者プロフィール

司法書士 野田啓紀
司法書士 野田啓紀
昭和56年 名古屋市生まれ、京都大学法学部卒業。
大学卒業後、複数の上場企業の管理部門にて、開示業務、株主総会運営、株式事務を中心に、IR、経営企画、総務、広報等に携わる。
平成26年司法書士試験合格後、名古屋市内の司法書士事務所勤務を経て、平成30年10月、司法書士野田啓紀事務所を開業。地元密着で、相続・認知症対策のコンサルティングに注力する。
令和3年1月、愛知県内で五つの司法書士事務所を統合して、グラーティア司法書士法人を設立し、代表社員に就任する。
ウェルス・マネジメントを深めて、個人や中小企業オーナー向けに、相続、認知症対策、事業承継やM&Aに関与する。税理士、不動産業、寺社と連携し、遺言書、任意後見契約、家族信託の利用を積極的に提案している。
また、自身も、司法書士事務所の承継に取り組む。
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