監査役の責任

監査役を置いている株式会社の話です。

監査役は、日々の業務が法令に違反していないか、また、会計帳簿の内容が決算書に正しく反映されているかどうかを確認することが仕事です。

中小企業の場合には、社長の身内の方や先代の役員などを監査役とされていることが多くあります。

しっかりと監査役の仕事をされていれば問題ありませんが、特に、登記簿に名前だけ載せている監査役には十分にご注意ください。

監査役の責任

判例で、監査役の中でも、その役割を会計監査に限定された監査役の責任が示されました。

これは、監査役を置いている中小企業には一般的に当てはまるもので、重要な考え方となります。

会計限定監査役は、計算書類等の監査を行うに当たり、会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでない場合であっても、計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば、常にその任務を尽くしたといえるものではない。

令和元年(受)第1968号 損害賠償請求事件、令和3年7月19日第二小法廷判決

会計帳簿で横領が見抜けなかった監査役の責任が追及され、原本を閲覧する等の裏付けを確認すべき場合もあると指摘されました。

事案の概要

ある会社に、昭和42年7月から平成24年9月までの間、監査役を勤めていた方がいました。

その会社の経理担当の従業員が、平成19年2月から平成28年7月までの間、多数回にわたり、横領していたことがわかりました。

その従業員は、会社の銀行口座の残高証明書を偽造していました。

監査役の監査において、その従業員から提出された残高証明書が偽造されたものであることに気付かないまま、これと会計帳簿とを照合し、計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しました。

また、その監査役は、各期の監査報告において、適正に表示している旨の意見を表明しました。

平成28年7月に、取引銀行からの指摘によって、上記の横領が発覚しました。

この監査役の責任について、裁判で争われました。

最高裁判所の判断

最高裁判所は、監査役が任務を怠っていないとする主張を認めませんでした。

監査役の役割は、計算書類等について、信頼性を高めるために、情報に食い違いがないかを確かめるなどして監査を行うほか、会社の財産や損益を適正に表示しているかどうかについての監査報告を作成することです。

監査役は、会計帳簿の内容が正確であることを当然の前提として計算書類等の監査を行ってよいものではありません。

監査役は、会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでなくとも、会計帳簿の作成状況等につき取締役等に報告を求め、またはその基礎資料を確かめるべき場合があります。

カタチだけの監査役にご用心

この事例は、大企業の話ではありません。

役員

先生、うちみたいな中小企業では、そんなに細かいところまできっちりとやってませんし、できませんわ。

会社は、社会の公器です。

規模の大小は関係ありません。小さいことを理由に、言い逃れは許されません。

なぜならば、会社には、役員のみではなく、従業員、取引先、金融機関など、多くの方がかかわり、助け合いながら経営をしています。

小さなミスや隠し事が、周りに大きな迷惑をかけてしまい、会社の信用を失うことになります。

今回の事例では、監査役としてなすべき監査を行ったと主張されていましたが、それでも責任がないとは認められませんでした。

ましてや、帳簿も点検することなく、監査役が監査報告書にめくら判をついているだけでは、会社の決算に誤りがあった場合に、責任を負うことがあります。

カタチだけの監査役がいて、社長まかせ、税理士まかせではいけませんと指摘するものです。自分で、書類に目を通して、確認することが求められます。

役員が正しく経営することや決算書をつくることは当然のこととして、監査役がその仕事をされていない会社であれば、監査役を置かない会社に変更することも検討なさってください。

中小企業では、定款で監査役を置かなければならない会社にしているために、名前だけ借りてきて、監査役にされていることがあります。

この場合、定款を変更して、監査役を廃止することもできます。

名前だけの役員は、速やかに解消しましょう。

グラーティア司法書士法人では、会社の組織に関するご相談や役員変更のご相談を承ります。

投稿者プロフィール

司法書士 野田啓紀
司法書士 野田啓紀
昭和56年 名古屋市生まれ、京都大学法学部卒業。
大学卒業後、複数の上場企業の管理部門にて、開示業務、株主総会運営、株式事務を中心に、IR、経営企画、総務、広報等に携わる。
平成26年司法書士試験合格後、名古屋市内の司法書士事務所勤務を経て、平成30年10月、司法書士野田啓紀事務所を開業。地元密着で、相続・認知症対策のコンサルティングに注力する。
令和3年1月、愛知県内で五つの司法書士事務所を統合して、グラーティア司法書士法人を設立し、代表社員に就任する。
ウェルス・マネジメントを深めて、個人や中小企業オーナー向けに、相続、認知症対策、事業承継やM&Aに関与する。税理士、不動産業、寺社と連携し、遺言書、任意後見契約、家族信託の利用を積極的に提案している。
また、自身も、司法書士事務所の承継に取り組む。
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