経営を次の世代に譲り渡す事業承継は、株式会社に限った話ではありません。
個人商店、病院、士業事務所、農家、飲食店など、個人事業主でも、代表者が引退するときは事業承継をすることになります。
もっとも困るのが、事業用の資産をどのように次の世代に移すかということです。
株式会社であって、会社名義の資産であれば、株式を譲渡すれば、自動的に資産も移転します。
個人事業主の場合は、すべての資産は、代表者個人の財産です。
つまり、個人の資産と事業用の資産の垣根がなく、ゴミ箱ひとつから、行き先を考えなければならないということです。
生きているうちに引退を考えるならば、個人の資産と事業用の資産をできる限り分類して、次の世代に引き継ぐこともできますが、亡くなって相続が発生したときには、これらを相続人が分類して、遺産分割をすることになります。
目に見える財産だけではなく、売掛金や買掛金、借入金のような債権や負債も、相続財産となります。
分けられる財産と分けられない財産が混在し、相続を考えることが難しくなりがちです。
そこで、ひとつの方法として、法人化することを提案しています。事業会社や資産管理会社など、方法はいくつかあります。
個人事業を法人化することで、個人の財産と会社の財産を分別管理することができます。
会社の財産は、株式(株券)で表現され、経営者の相続や相続税を考えるにも、わかりやすくなります。
事業承継をするにも、株式を譲渡すれば済み、個々の資産を移転させる必要がありません。
特に、事業の負債が会社の負債となることで、相続をするときにも不安材料が減ります。
また、法人化しておくことで、家族以外に事業を承継させやすくなります。
個人事業者のままでは、個人の資産と事業用の資産が混在している中で、従業員や第三者に経営を譲っていくことは難しいでしょう。
これは、仕組みや手続のことのみならず、外見上も、個人事業を積極的に後継ぎしたがる方は多くありません。
法人化しておくことで、事業承継の選択肢が拡がっていきます。
次の世代が新しいビジネスに取り組んだり、人材の採用を進めるにも、個人事業主と株式会社とでは、まるで印象が異なります。
個人事業主の事業承継の前提として、法人化を検討されてはいかがでしょうか。
投稿者プロフィール

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昭和56年 名古屋市生まれ、京都大学法学部卒業。
大学卒業後、複数の上場企業の管理部門にて、開示業務、株主総会運営、株式事務を中心に、IR、経営企画、総務、広報等に携わる。
平成26年司法書士試験合格後、名古屋市内の司法書士事務所勤務を経て、平成30年10月、司法書士野田啓紀事務所を開業。地元密着で、相続・認知症対策のコンサルティングに注力する。
令和3年1月、愛知県内で五つの司法書士事務所を統合して、グラーティア司法書士法人を設立し、代表社員に就任する。
ウェルス・マネジメントを深めて、個人や中小企業オーナー向けに、相続、認知症対策、事業承継やM&Aに関与する。税理士、不動産業、寺社と連携し、遺言書、任意後見契約、家族信託の利用を積極的に提案している。
また、自身も、司法書士事務所の承継に取り組む。
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