親の土地に住宅を建築して、親と同居する。二世帯住宅には、メリットが多くあります。
親と同居することで、子育てや介護については、協力をしやすいほか、住宅取得資金については、建物の代金だけを準備すればよいため、経済的です。
身近な環境で、ライフプランを支え合うことができるものです。
また、税制面でのメリットもあります。
不動産取得税や固定資産税の軽減措置が、建物ひとつに対して、二世帯分受けることができます。
ただし、相続の場面では、これが大きな落とし穴になることがあります。

法定相続分
この事例では、父に死亡により、母・長男・二男の3名が法定相続人となります。
父母と長男夫婦が同居していたので、そのまま母と長男がこの土地と建物を相続しようとすれば、二男が法定相続分を主張してきます。
遺産の中に、二男の法定相続分に相当する額の現金があれば、速やかに解決できます。
しかし、遺産のほとんどが不動産であり、現金がなかった場合には、不動産を相続した母と長男が、二男に法定相続分相当額の現金を支払う代償分割を検討することとなります。
遺言書
この事例のような場合には、遺言書を準備しておくことも重要です。
遺言書に、不動産は誰に相続取得させ、金融資産は誰に相続取得させるのか、明確にしておくことで、遺産分割が滞ることは避けられます。
ただし、二男から長男へ遺留分侵害額請求をされることが予想され、遺言書があっても争族になる可能性があります。
遺留分相当額を二男にも渡すような内容の遺言書を作成するほか、生命保険を活用することで、争族になった場面でも、遺産分割を待たずに、速やかに金銭解決できるような段取りをすることもできます。
配偶者居住権
母の住居を確保するために、配偶者居住権を設定することも方法としては考えられますが、この事例では、土地の所有権についても解決しなければならないため、特効薬としては採用しにくいでしょう。
認知症への備え
二世帯住宅を建築し、土地や建物が親子で共有名義になっている場合に、考えなければならないリスクは、認知症です。
将来、不動産の売却や、バリアフリー工事のためにリフォームの請負契約をしたり、住宅ローンの借り換えをしたりするときには、共有者全員で契約や登記手続をすることになります。
そこで、当事者の中に、判断能力が低下している方が含まれるようなときには、これらの手続をすることができなくなります。
二世帯住宅を建築するときには、将来のリスクに備えて、遺言書や任意後見契約についても、あわせて準備されることをご検討いただきたいと思います。
投稿者プロフィール

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昭和56年 名古屋市生まれ、京都大学法学部卒業。
大学卒業後、複数の上場企業の管理部門にて、開示業務、株主総会運営、株式事務を中心に、IR、経営企画、総務、広報等に携わる。
平成26年司法書士試験合格後、名古屋市内の司法書士事務所勤務を経て、平成30年10月、司法書士野田啓紀事務所を開業。地元密着で、相続・認知症対策のコンサルティングに注力する。
令和3年1月、愛知県内で五つの司法書士事務所を統合して、グラーティア司法書士法人を設立し、代表社員に就任する。
ウェルス・マネジメントを深めて、個人や中小企業オーナー向けに、相続、認知症対策、事業承継やM&Aに関与する。税理士、不動産業、寺社と連携し、遺言書、任意後見契約、家族信託の利用を積極的に提案している。
また、自身も、司法書士事務所の承継に取り組む。
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