相続対策、相続税対策で、生前贈与を検討することがあります。
ご自分の意思で相続財産の行き先を決め、財産を圧縮できるところにメリットは大きいものですが、かかるコストも考慮して決定することが大切です。
あげたものは、戻ってこない
贈与したものは、相手に引き渡しをしてしまえば、やっぱり返してくれとは言えません。
気が変わったり、その後に関係が悪化しても、これを取り戻すことはできないとお考えください。
贈与を急がない場合には、遺言書をつくっておき、亡くなった後に受け取ってもらえるようにしておけば、気が変わったときに、いつでも遺言書を書き直すことができます。
また、負担付贈与契約をすることも考えられます。
たとえば、同居や身の回りの世話をしてもらうことを約束して、財産を贈与すれば、その約束が破られたときには、贈与した財産を返すように言うことができます。
そのときには、この約束の内容が争われることになりますから、贈与契約書を作成して、内容を明らかにしておかなければなりません。
もっとも、お亡くなりになる順番は、誰にもわかりません。
夫から妻へ、生前贈与したものの、妻のほうが先に亡くなり、結局、相続で夫に戻ってきてしまうということもあります。
贈与に関する税金
不動産を生前贈与するときには、税金がかかることに注意しましょう。
贈与税のほか、登録免許税、不動産取得税がかかります。
登録免許税は、相続のときに比べて、贈与では5倍かかります。
不動産取得税は、相続のときにはかかりませんが、贈与ではかかります。
また、亡くなる直前の3年間に贈与した財産は、一部の場合を除いて、相続財産に持ち戻され、相続税の課税対象となりますので、注意しましょう。
あげる、もらうの意思表示
生前贈与は、契約であり、法律行為です。
つまり、意思能力がなければできません。認知症などで、判断能力が低下してきたときには、無効となることがあります。
実行するなら、早めに計画をして、進めましょう。
また、贈与は、口約束でも成立しますが、あげる側ともらう側が意思疎通できていないものは、贈与にはなりません。これを証明するために、契約書を作成しましょう。
夫の預金から、少しずつ妻や子、孫の預金へ移し替えたり、生命保険に入ったりすることは、しばしば見られますが、あげる、もらうの合意がないのにこれをしても、贈与したことにはなりません。
いわゆる名義預金、名義保険と呼ばれ、贈与があったとは認めてもらえません。
これは、生前に移し替えたお金も夫の相続財産として合算され、相続税の課税対象とされてしまいます。税務調査では、重点的に調査されます。
身内同士で気軽にはじめてしまう贈与ですが、思わぬところで問題が出てくることも多いものです。取りかかる前に、専門家に相談をすることをおすすめしております。
グラーティア司法書士法人では、税理士と連携し、生前贈与のご相談を承っております。
投稿者プロフィール

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昭和56年 名古屋市生まれ、京都大学法学部卒業。
大学卒業後、複数の上場企業の管理部門にて、開示業務、株主総会運営、株式事務を中心に、IR、経営企画、総務、広報等に携わる。
平成26年司法書士試験合格後、名古屋市内の司法書士事務所勤務を経て、平成30年10月、司法書士野田啓紀事務所を開業。地元密着で、相続・認知症対策のコンサルティングに注力する。
令和3年1月、愛知県内で五つの司法書士事務所を統合して、グラーティア司法書士法人を設立し、代表社員に就任する。
ウェルス・マネジメントを深めて、個人や中小企業オーナー向けに、相続、認知症対策、事業承継やM&Aに関与する。税理士、不動産業、寺社と連携し、遺言書、任意後見契約、家族信託の利用を積極的に提案している。
また、自身も、司法書士事務所の承継に取り組む。
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